この前感想を書いた『蒼穹の昴』の続編です( →歴史に弱くても大丈夫。浅田次郎『蒼穹の昴』を読んだら)。
もう少し別の本を挟んでから読むつもりでしたが、NHKで放送したドキュメンタリー『紫禁城のすべて』を観てたら読みたくなちゃったのでした。
カバーには「ちんぴ」と表記されてますが本文のルビは「チエンフエイ」。
「チェンフェイ」が言語読みに近いのでしょう。
光緒帝に愛された珍妃が義和団事件のどさくさで井戸に投げ込まれ殺害されてしまいました。
二年後、北京駐在のイギリス、ロシア、ドイツ、日本、四人の偉い人が真相解明に乗り出します。
謎の美女ミセス・チャン、アメリカ人の新聞記者トム・ゴードン、蘭琴など、『蒼穹の昴』で重要な役割を演じた者や、珍妃の姉 瑾妃、愛新覚羅溥儁らが珍妃の死亡事件について一人称で語っていく形式です。
各証言の間に日独路英の見解が挟まれますが、それぞれの証言内容が食い違っていて、聴けば聴くほど迷路にはまっていきます。「藪の中」です。
危険についてその場にいた者が克明に語るため、先日観た映画『ナイル殺人事件』で探偵の推理がすべて映像で再現されていたのを思い出しました、推理ものの手法なのでしょうか。
証人たちは事件のこと以外にも自分のこと、他の人たちのこと、国のことなどを語るので、作者は『蒼穹の昴』に入れられなかった “想い” みたいのをここで出してきたのかな、と思いながら読み進めまていました。
それで充分面白かったのですが、最後の証言者が語るに及んで、もうなんか別物になっていきました。
珍妃殺害に直接手を下した者、命令を下した者がわからないまま最後の証言者の話は始まります。
そこで「珍妃を殺したもの」が何だったのかがわかります。
暗くて陰惨な真実でしたが最後の最後に珍妃の一人称の語りが入り、救われたような気持ちになります。これが真実なのでしょう。というか真実と思いたい尊い言葉でした。
というわけで。
次はこれを読み始めました。ドSF。
三部作ということでちょっと時間がかかりそうですがワクワクしてます。
読み終わったらまた感想を書きますのでどうぞよろしく。