夏休みといえば時代劇映画しかありませんね。
というわけでBS松竹東急で放送していた『柘榴坂の仇討』を鑑賞。
浅田次郎の短編小説が原作。主演は中井貴一、監督若松節朗、2014年の映画です。
浅田次郎原作、中井貴一主演の時代劇というと『壬生義士伝』が思い浮かびますが、血まみれで痛そうな場面がたくさんあった『壬生義士伝』と比べるとこちらはだいぶソフトで、心穏やかな人情ドラマとして観ることができました。(『壬生義士伝』感想はこちら→年忘れ映画劇場2022 『壬生義士伝』を観たら)
「命に替えてお護りします」と約束した主君大老・井伊直弼を、護衛についていた桜田門外で殺され、自分だけは生き残ってしまった彦根藩の下級武士・志村金吾(中井貴一)は、切腹も許されす、打首の沙汰もなく、逃亡した襲撃者たち五名の捜索、仇討ちを命じられます(両親はこの件の責任というか息子の身代わりに自害してしまいます)。
金吾は妻セツ(広末涼子)を故郷に帰し、ひとりで仇討ちのために生きようとしますがセツは帰らず、そばで金吾を支える道を選びます。
“良妻”というやつでしょうか。
何年も成果が出せない金吾。その間に時代は移り変わって「武士」は時代遅れになっていきます。しかし仇討ちを果たせない金吾の時間は止まったままです。
五名の逃亡者は金吾とは無関係にひとり、またひとりと捕えられ、あるいは死亡し、とうとう佐橋十兵衛(阿部寛)一人を残すのみになりました。
苦悩し、死を望みながらも仇討ちを果たそうとする金吾。生活の全てを支える涼子。じゃなかったセツ。
“良妻”です。
一方逃亡する佐橋十兵衛にも現在の生活がありました。
必殺シリーズの飾り職人やら組紐屋やらがいるような長屋に住んで車屋として生活していました。
そこに住む幼い女の子お千代とその母親とちょっといい感じになってたりしますが、心の底からは笑っていない、そんな感じでした。
必殺シリーズなら悪いやつに殺されちゃいそうな母娘ですがそんなことにはなりませんでした。よかった。
信念や心意気といった “情” を感じられ、ストイックだけどユーモアもあるいい映画でした。
でしたが、なんでしょう。
広末涼子がとてもいい役でいい演技だったと思うのですが、なんでしょう、広末涼子が出るたびになんか気が散るっていうか、余計なことを考えちゃうっていうか、映画と関係ない人の顔が頭に浮かんだりしてちょっと困りました。きっと私の人間としての修行が足りないのでしょう。
中井貴一と対照になっている阿部寛も「阿部寛!」って感じで良かったです。全然キャラの違う役やっても「阿部寛!」なんだよなぁ、この人。すごいなぁ。
あ、あと吉田栄作が出てました。地味に。
あ〜誰だっけこれ?知ってるこの顔知ってるえ〜と、、、
吉田栄作!
と思い出した時は気持ちよかったです。
テレビ視聴なので確かではありませんが、金吾が仇討ちを命じられて以降は画面の彩度が低くなっていたように思いました。セツの顔もなんか土気色に見えました。
クライマックスで赤い花が重要な役を果たすので、そこに焦点が当たるようにしたのかもしれません。気のせいかもしれません
というわけで。人情ドラマとかお好きな方にはお勧めです。そっち寄りです。
原作はこちらに収録されています。私は未読ですが。
浅田次郎『五郎治殿御始末』