543 謎の懐中電灯おじさん

僕の町には懐中電灯おじさんがいるんだ。
“おじさん”って言っても僕より若いと思われるんだ。
おじさんは僕と帰り道がいっしょなんだ。駅からの。
おじさんはけっこう強力な懐中電灯で夜の道の前方を照らすんだ。
でもずっと照らしていなくて、時々パッと照らすんだ。
パッと照らして左右や上下に光を振ってすぐ消すんだ。
おじさんの前を歩いてると鬱陶しいんだそれが。時々強力な光で背後からパッ!何歩か歩くとまたパッ!
それも足元だけじゃなくて、前を歩いてる人の背中とか後頭部にも光を当てるんだ。
何度か見かけた後、僕は思ったんだ。
この人おかしい。

後ろから照らされるのは気持ち悪いのと、おかしい人に背後を歩かれるのは怖いので、後ろから懐中電灯が光ったら僕はおじさんをやり過ごすことにしたんだ。スマホとかいじってるふりして。
おじさんは僕の目の前を通過して行くけど怖くて顔はよく見れないな。

おじさんをやり過ごすとこっちも少し安心して落ち着いて観察してやるんだ。
目が悪い人なのかな?とも思ったけど、だったら足元をずっと照らしていればいいのに、おじさんは電柱を照らしたりするんだ。ちょうど人の頭があるくらいの位置を。
前を歩いている女の人の背中や、お尻のあたりを照らしたりもするんだ。でもエッチな感じでもないんだ。
セブンイレブンのまん前で明るいのに道を照らしたりするんだ。
もうわけわかんない。
何を照らしたいんだおじさん。何に光を当てて何を明らかにしたいんだ。
いつか必ず。
その謎を解いてみせるぞ!

でもおじさん、
かなり近所に住んでるはずなんだよなぁ。昼間会ってもわかんないな。懐中電灯持ってないから。

でもどうしよう、
昼間でも懐中電灯つけて歩いてたら。

走って逃げちゃうな、僕。

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