以前から読みたいと思っていたのですが、700ページ超のボリュームのため、私の読書計画に突っ込む余地がなかなか見つからず後回しにしていました。
とか言いながら。
その「読書計画」もその時の気分で大幅に修正されるいいかげんなもので、ある日読書気力が充満して「なんか歯応えのあるものが読みたい!読ませろ!」となり、今回の読書行動に及んだわけです。こんな時は電子書籍は便利ですね。気分に合わせて読むもの選べる。
作者のアンディ・ウィアーは映画『オデッセイ』の原作となった『火星の人』の作者ですね。映画は観ましたが原作は未読です。
未読ですが、映画『オデッセイ』は原作のエッセンスみたいのは再現してるんだろうな、とこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んで思いました。
主人公がどんなピンチでもポジティブでユーモアを忘れない。生死に関わるほどのどんな問題が起きても諦めずに解決策を見つけ実行する。広い分野の科学に精通している。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の主人公ライランド・グレースもそんなやつでした。
ただ物語全体にスケールが宇宙レベルでデカくなっていて、グレースの肩に地球の全生命の運命がのしかかっているのでした。
(↑上巻表紙。重そうなもの背負ってますが、グレースはこんなもんじゃない大きくて重いものを背負わされます)
物語はグレースが医療施設らしきところで目覚める場面から始まりますが、たくさんの管に繋がれたままのグレースには記憶がなく、ここがどこでなぜ自分がここにいるのかそもそも自分は誰なのか名前すら思い出せません。
そのくせ知識はあって、「8の立方根は2」とかは知ってます(私は知らなかった)。
そこから徐々に記憶が戻り始め、グレースが思い出すのと同じ速度で読者も何が起きているのか知ってゆくことになります。
過去の記憶の語りと現在進行の出来事が並行して語られ、真相が徐々に明らかになり、読者はこれでグイグイ引っ張られます。
過去の記憶によると、太陽に何か起こっていて、放っておくと地球がとんでもないことになるみたいです。
そこで立案されたのが “プロジェクト・ヘイル・メアリー” 。
「ヘイル・メアリー」というのはアベ・マリアという意味だそうですが、アメリカンフットボールの試合で、負けているチームが一か八かで放つロングパスをこう呼ぶらしいです。
だいじょぶか地球。
ロングパスにも程があるプロジェクトだけど一か八かって。
ヤケクソか地球。
成功の可能性が低いプロジェクトですが、それでも成功率を上げるために地球規模で万全の体制を築いていく過程も描かれます。
読む前に『三体』と比較するようなレビューを目にして「どういうことだろ?」と思いましたが、読んでいると次から次にいろんなことが起き、情報が増えていくのでそんなこと忘れちゃいます。
で、そんなことすっかり忘れた頃に(上巻の後半あたり)ある事が起こり、「ああそういうことか」と思い出します。
ただ物語の手触りみたいのは『三体』とだいぶ違うというか正反対ですね。ちなみに全編グレースの一人称です。
なんていうか、クラークをずっと楽天的?(ポップつーの?)にしたような読後感でした。
Amazonのページには「ライアン・ゴズリング主演で映画化進行中」と表示されていますがどうなるんでしょう?邦題は『地球を救え!ヤケクソプロジェクト』かな。
映画化の話っていつの間にか消えていたりするので、ここは無事に映画化されることをお祈りいたします。(これ書きながら映画『オデッセイ』観てましたが、記憶より重さのある映画でした。もっと明るく軽いように思っていましたがそうでもなかったです)
というわけで、長さが気にならない面白さでした。情報量が多いものや合理的なことが好きな人にはおすすめかと思われます。
でも。
私は『三体』の方が面白くて好きで重要な小説だと思うなぁ。無理に比べるこたないんだけどさ。
ちなみにAmazonでは現在(2024年6月30日)期間限定のキャンペーン中で、上下巻が各990円で購入できます。
私は倍くらいの値段で買いました(ちっ!)。
文庫でも出るのかもしれませんが、お買い求めの際は値段を確認してくださいね。