この前PIXARについての本の感想を書きましたが( →絶対落ちない綱渡り。ローレンス・レビー『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』を読んだら)、今度はMARVELの似たような本。
邦題はちょっとなんだかアレですね、ビジネス書臭がぷんぷんしますね。日本ではこんなタイトルの方が売れるんでしょうか?経営者レベルの人には届くんでしょうか?原題は「THE MARVEL STUDIOS STORY」です。シンプルですね。
MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密
PIXARと比べるとずっと長い歴史のMARVEL。コミック出版に乗り出すあたり(1939年)から始まっているので、全体に駆け足気味です。戦前だもんね。展開早くてスラスラ読めますが。
知らなかったというかそういうところに興味が無かったのですが、MARVELって同じ会社が一貫性を持って継続してたんじゃなくて、経営陣も社名もガラガラ変わりながら発展したり落ち込んだりを繰り返していたんですね。経営者とクリエイターの関係も良かったり悪かったりの繰り返しだったようです。
何度も経営難に陥ったおかげでキャラクターたちの映画化権がいろんな映画会社に売られてたりしてます。
スパイダーマンの映画化権のゴタゴタ(?)は知ってましたが、他のキャラクターの映画化権も切り売りされていたそうです。
出稼ぎしてますヒーローたち。
PIXARの本を読んだ時は、成功するのがわかっているのでブログのタイトルに「絶対落ちない綱渡り」と付けましたが、MARVELはちょいちょい落ちてますね。でもその落ちても落ちても戻って来たんですね、蜘蛛の糸やパワードスーツのジェットや放射線の力やらで。とかうまいこと言っとくか。
映画化権の契約内容はさまざまですが、そのキャラクターの映画をある期日までに撮影開始しないと権利が消滅する、というような内容のものあって、それを守るために『ファンタスティック・フォー』が低予算で作られそうになったことがあるそうです。そこに登場したのがあのロジャー・コーマン。低予算映画の帝王ですね。さすがコーマン。
期限切れ3日前に撮影は開始されましたが、この『ファンタスティック・フォー』は世に出ることはありませんでした。マーベルがお金を払って撮影したフィルムを買い上げ燃やしたんだそうです。低予算映画でキャラクターのイメージが悪くなるのを防いだんですね。
ファンが愛するキャラクターを大事にすることでMARVELは映画界でも地位を築いていきます。ただ、PIXARの本もそうでしたが、苦しい時期の方が読んでて面白いですね。苦し紛れにみんないろんなことしちゃうその剥き出し感が。
まぁ順調に評判になってからはなんとなく知ってる話になるから興味が薄れて当然かもしれませんが。
あとこの本、長い歴史と紆余曲折のおかげで人名がやたら出てきます。出版界、映画界ほかの実在の人物だけでなく、コミックのキャラクターも大量に出てきて、そのほとんどに脚注がついて紹介されてます。人名事典みたいです。
映画タイトルにも脚注が付いているので脚注が全部で213個あります。ちなみに*213は映画タイトルの『ブレイド』でした。これは1998年のものではなく、再映画化計画のある『ブレイド』についてでした。
というわけで。今はディズニー傘下で大量に映画を生産している勢いのあるMARVELのお話でした。なんかもう工場みたいですね、MARVELって。