絶対落ちない綱渡り。ローレンス・レビー『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』を読んだら

スティーブ・ジョブズに請われてピクサーの最高財務責任者となったローレンス・レビーによる実話です。

『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

レビーが就任した当時のピクサーは、『トイ・ストーリー』製作が試行錯誤中で、収入の道は限られていて、ジョブズの私財投入でかろうじて生き残っているような状態でした。
そのジョブズにしてもAppleを去って設立したNeXTコンピューターがまだうまくいかず、ピクサーはむしろお荷物のように感じていたようです。
それに比べてレビーは特に問題を抱えていたわけではなく、ジョブズの誘いを断っても特に困らない、どころか誘いを受けるためにはいくつかの問題(居住地、成功の見込みの少なさなど)と折り合いをつけなければなりませんでした。
すごい人生の決断を迫られているわけですが、読んでるこちらはジョブズとピクサーのその後の大成功を知っているので、絶対落ちない綱渡りを見ているような気楽さがあります。予定調和ストーリーにも程があります。
しかし、うっすらApple信者の私は、iPodもIPhoneも、あのカラフルなかわいいIMacも無い時代の話だと思うとなんかしみじみしちゃいます。

『トイ・ストーリー』が記録的な大ヒットとなり、その後の作品も次々とヒットして、ディズニーとの契約も有利な条件で更新できてめでたしめでたし。
かと思ったらまだ終わらず。
ピクサーは「あまりに成功しすぎたおかげでとっても危ない」という段階に入ります。一度(一作)失敗したら大きな転落が待っている(株価とか)、というわけです。そういう視点、観客には無いですよね。
で、どうしたか?

ピクサーのアニメとディズニーのアニメっていつ頃からかどれがどっちのだかよくわからない(でも別にどっちでもいい)ようなことになってましたが(私だけかな?)、なぜそうなっているのかもこの本を読むとわかります。
ビジネス書の類は興味なくて全く読まない私が大変面白く読めたので、「ビジネス大成功の秘訣」みたいのを期待する人には物足りないかと思います。
でも、「いい人生を送るための覚悟の決断」がここにありました。それ大事。

blinkjitu
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