あっちもこっちももう大変。『特捜部Q―自撮りする女たち―』“Selfies” を読んだら

 お楽しみシリーズの第7作『特捜部Q―自撮りする女たち―』読了いたしました。

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ミステリ)

毎度事件以外の厄介事に足を引っ張られているコペンハーゲン警察のカール・マーク。元妻、元妻の連れ子、元妻の母親、元カノへの未練。みんなでカールにまとわりついてきます。左門豊作の弟妹にまとわりつかれる星飛雄馬のようです。

ただ今回は元妻と元妻の連れ子は比較的おとなしく、元カノへの未練もコントロールできる程度に納まっているように見えました。元妻の母親の認知症は進行していたようですが。

『自撮りする女たち』は2016年が「現在」になってます。ついこないだですね。公園で老女の撲殺死体が発見されるという事件が起き、その殺害方法が2004年に起きた未解決の殺人事件(ついこないだですね)と手口が似ているという元殺人課の課長マークス・ヤコプスンの指摘から特捜部Qが関わることになります。

過去の未解決事件の捜査が現在の事件の解決に結びつく、というのがこのシリーズのフォーマットだと思っていましたが、今回はもっと複雑になっていました。
過去の事件と直接は関係のない事件が次々に進行していきます。
いくつもの殺人事件が起こりますが、ひとつの陰謀や動機に基づいていないのでバラバラな感じです。いつもより登場人物も多く、みんなどこかバランスが崩れてるめんどくさいやつばかりでした。

さらに、前作から精神の調子を崩していた特捜部のローセがますます壊れていき、仕事ができなくなります。その過程でローセの壮絶な過去、父親に関する事件が明らかになってゆき、その事件も特捜部案件になっていきます。

なんでしょう?どうなっちゃうんでしょう?納まるんでしょうかこの話。どんどん人が死んでるんですけど。
カール、アサド、ローセ、新入り若造ゴードンの四人で、謎や問題を抱えながらも事件を解決するシリーズものを安定させるチームができてきたと思ったらもうぶっ壊しちゃうような展開。
そのくらい破壊力のあるローセ案件でした。壊れてゆくローセの内面も詳しく描写されるため、読んでいてこっちの胸が痛くなります。
ローセの身を案ずることで男三人の絆が強まったのが救いと言えば救いでしょうか。

次作は『アサドの祈り』。ローセがこれからどうなるかはわからないままでしたが、今までの謎の行動や精神が不安定だった原因がわかってひと段落。次はいよいよアサドの謎が明かされるようです。
現時点(2023年1月)では『アサドの祈り』が最新刊ですが、その後はカールのトラウマ「釘打ち機殺人事件」の真相に迫って行くと思われます。
そして最後は大団円。この作者のことですから泣かせるラストを用意してくれていることでしょう。

『アサドの祈り』、すでに購入して待機中ですが、「特捜部Q」ばかり読んでいるわけにもいかないので、これを読み始めました。

『獣の奏者』上橋菜穂子 (著)

全5冊。時間かかるかなと思いましたがすいすい読めます。面白くて。
これ終わったら『アサドの祈り』を読むことにします。待ってろよアサド!
でも。
読む本がたくさんあるって幸せだなぁ。

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