父の愛情は右手のひらの丸い跡。映画『グエムル −漢江の怪物−』を観たよ

映画・ドラマ

怪獣映画ファンの私としては、怪物が最初に登場して河原で大暴れするシーンだけでもう大満足。
あの、人間と絡むのに一番怖い中途半端な大きさで走り回る怪物が斜面ではズルズル滑ったり、音楽を聴きながら爪の掃除をしている女が周囲の騒ぎに気づかず逃げ遅れるとか、土手の上の道路を走るバスの中から河原の惨劇を見おろすとか、本当に怪物が現れたらこんな感じなんじゃないかと思っちゃう。
リアルって、命がけの場でも「ちょっと間抜け」。
この「ちょっと間抜けなリアル」が全編を覆っていて、いわゆる「ご都合主義」をドロッと包んでいる。

そもそも怪物が誕生した原因は、毒物を河に流したからだが、それを指示したのが「ホコリが何より嫌い」な、きれい好きの米国人の指示という皮肉たっぷりな設定。汚れたものが目の前から消えればいいという勝手な「きれい好き」ぶり。
その後釣り人が変な生き物を見かけるが、生物の異様さより娘にもらったコップのほうが心配。
6年後、橋から飛び降りて自殺しようとしているどこかの社長が成長した怪物を見かけて、自殺を止めようとしている部下にそれを告げるが、部下は社長が何を言ってるのかわからない。社長は「おめでたい奴らだ」と言い残して河に飛び込む。
この社長のシーンの後、「괴물」(怪物)とタイトルが出て、惨劇が起こる河原のシーンになるが、ここで、後半に出てくる貧しい兄弟がチラッと出てくる。最初観た時はこの兄弟、わりと唐突に現れたな、と思ったけど、見返してて気がついた。後半での行動も、ここをちゃんと観てればわかるようになってる。

怪獣の描写としては最初の河原のシーンが頂点で、後はどちらかというとホラーっぽくなっていくので、怪獣映画ファンとしての私はこれだけでいいや、と思ってしまうが、劇中の父カンドゥ(ソン・ガンホ)と同じく、中一(13歳)の娘がいる父親としての私は、むしろその後の展開こそ身に迫ってくる。

その後は、実際に起こったことの重大さに対して、対処する公的な立場の人間の言葉と行動のちぐはぐさと他人事感と闘う家族の姿が描かれる。
娘ヒョンソ(コ・アソン)のため、隔離されても警察に追われても軍隊に監禁されても麻酔を何本射たれても頭に穴をあけられてもあきらめないカンドゥ。カンドゥの父ヒボン(ピョン・ヒボン)と弟ナミル(パク・ヘイル)、妹ナムジュ(ペ・ドゥナ)も、孫であり姪であるヒョンソ救出のために命をかける。権力に屈せず、既成概念とらわれず、勇敢に。でも時々ちょっと間抜けに。

緊張と皮肉なユーモアと間抜けがいいバランスで盛り込まれていてすごく面白い映画なんだけど全体としては悲劇なんだろうなぁ。
公的なものを無条件に信じたり頼ったりしてはいけないよ、と言われている気がしました。社会の大きな構造や既成概念より自分の子供が大切でしょ?と。
この映画、韓国では興行記録を塗り替える大ヒットだったけど、日本では興行的にはイマイチだったそうです。
意味はわからないけど意味がありそうなセリフとか、アメリカに対する感情とか、韓国人にしかわからないところもたくさんありそう。何箇所かで缶ビールに注目させるシーンがあったり(派手に泡を吹き上げるけどそれだけ)、韓国製の焼酎の瓶で対怪獣火炎瓶を作ったりとかもなにか意味がありそう。あの結末にも絶対意味があるはず。わかんないけど。
英語タイトルが『The Host』で、どういう意味だろ?と調べてたらラストの意味がちょっとだけわかった。ちょっとだけね。
でもカンドゥの愛情と怒りは最後に右手のひらについた丸い跡ではっきり感じたよ。

監督・脚本ポン・ジュノ、2006年の韓国映画。
2006年というと日本映画では『小さき勇者たち~GAMERA~』もこの年ですね。これも怪獣、父と子のお話でした。まぁそれ以外共通点無いけどさ。

しかし、ソン・ガンホって誰かに似てるんだよなぁ。見てると誰かを思い出しそうになるっていうか。それが有名人なのか個人的な知り合いなのかわかんないけど。なにしろ思い出せないから。

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