富めるニートのイラつく話。夏目漱石『それから』を読んだら

活字の子 活字の子

「それから」というからにはどこかに時間的な基点「ここ」があるはずだ、と思いながら読み始め、読んでる最中もちょいちょいそのことを考えていました。

夏目漱石『それから』

主人公代助は三十過ぎの独り者。職も無く、親から毎月お金をもらって生活しています。
実家ではなく、身の回りの世話をする住み込みの書生門野や通いの婆さんがいる家での気ままな暮らしです。
しかも代助は、自分こそ高潔な思索に生きる者として世間から別格に置き、学の無い門野はもちろん、実業に汗を流す父や兄、そして企業人として会社に翻弄された親友の平岡までも見下しています。
生活に困っている平岡夫婦に金を工面して得意になっていますが、その金ももちろん親からもらったものです。
なんだこいつ?
文豪夏目漱石の作品ゆえ、若い者に薦められることも多いと思われますが、代助の行動や心理の矛盾は、自立して生活した者でなければ本当には理解できないのではないでしょうか。

代助はやがて、平岡の妻に恋心を抱きます。
そもそも平岡の妻三千代を平岡に紹介したのは代助だったのですが、その前に代助と三千代はちょっといい関係だった時期があったようです。
それが、平岡のもとであまり幸せでない(大事にされていない)様子の、さらに病気がちにもなっている三千代と再会して、保護したいという気持ちがともに生きて行きたいに変わっていったのです。
なんだこいつ?
代助の実家は実家で事業が思わしくなく、地方の地主の娘と代助の政略結婚的なものを画策したりしてます。
それがまた代助は気に入らなくて、元々うまくいってなかった父親との間がさらにこじれます。
代助の気持ちはますます三千代に傾いてゆき、ついにその気持ちを三千代に伝えます。
平岡からの愛情を感じられなくなっていた三千代は代助の気持ちに答える決心をします。
ところが。
父からの縁談を断り、父を怒らせ、実家からの援助が停止され、全く収入が無くなると代助はビビり始めます。
さらに。ことここに至っても本気で職を探す気もなく、本を売って当面しのごうとします。
なんだこいつ?

代助はビビった挙げ句、三千代に自分は生活力が全くないけどそれでもいいのかい?みたいなことを問います。
代助は三千代が拒絶してくれればそれで諦めようと思ったのではないでしょうか。
病弱な三千代は、自分は長くは生きられないからそんなことはどうでもいいのだ、いざとなったら死んでもいいのだ、というようなことを言います。
そこで代助はさらにビビり、困り果ててしまいます。
なんだこいつ?
なにをするにも覚悟が無いくせにプライドだけは高い屁みたいな男です。
最後は逃げ場がなくなり、どうしょうもなくなっちゃっておしまい。
「それから」の時間の基点はこのラストだったのです。
代助はそれからどうしたの?
文豪の作品はやはり若い時に読んでおくべきなのでしょう。
自立していない者は大事に思っている誰かを助けることなどできないということを知っておくために。

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