これはたまげた。SF小説『三体Ⅲ 死神永生』を読んだら

大人気「三体シリーズ」の第3部。読了いたしました。
第2部『三体II 黒暗森林』がなんか決着がつく感じで終わったので、あの後の話ってどうなるんだ?と読み始めました。
なるほどそうきたかと思いながら読んでたらどんどんすごくなって「うおー、なんだこりゃあ!」となって最後はもうどこか遠い遠いところに投げ飛ばされてしまいました。

第1部、2部の感想はこちら
宇宙に潜む(あるいは露わな)たくさんの “3”。大河SF小説『三体』を読んだら

虫けらだって生きているんだ友だちなんだ!小説『三体Ⅱ黒暗森林』を読んだら

そして第3部。
ネタバレみたいな書き方はしませんが、多少は内容に触れると思いますので、これから読もうと思ってる人はこの先は読まないほうがいいと思います。
何も知らず、何かに期待もせず、余談を持たずに読むとものすごい経験ができますよ。マジマジ。

三体III 死神永生 上

「死神永生」は「ししんえいせい」と読みます。
いい具合に決着感のあった『三体II 黒暗森林』の続きってどうすんだ?と思ったら、上巻の前半は短編SF(またはファンタジー)みたいなお話が続きます。
アイデアをポンポン投げてくる感じ(でも後にその意味がそれぞれつながっていきます。これがすごい。快感でした。)。

最初にファンタジー風の話があり、その後『黒暗森林』の決着時点より少し時間を遡って、あっちであんなことしていたころこっちではこんなことしてました、という話が始まりました。
第2部では語られなかった対三体作戦。
なるほどそうきたか、と思いましたが、その「こっちでこんなこと」がなんていうか人を人とも思わない鬼畜の所業。
三体世界の侵略艦隊が接近中という非常事態の元、本人が承諾した上でのことだからギリギリ「しょ、しょうがないよね…」と読み続けましたが、自分だったら「ひと思いに殺してください」とお願いするところです。
しかもこの作戦、失敗しちゃう。でも後に巡り巡ってその作戦に人類は救われ、たようになりますがでもやっぱり、みたいなことが立て続けに起こります。

長期の人工冬眠が可能な世界で、主人公の程心(チェン・シン)は何度も冬眠して目覚めた時代ごとに人類レベルの役割を果たすことになります。
程心が目覚める世界はその都度様変わりしていて、読者はそれに戸惑い、何が起こったのかと興味を惹かれることになります。
程心と一緒に未来へ未来へ進むうちに感情移入は深まり、やがて三体人より恐ろしい敵に攻撃された太陽系の様子を実感を持って体験することになります。
太陽系への最終攻撃は、絵になったところを見たいのですが、読んだ人が納得するような絵にするのは無理な気がします。
具体的な絵にはならないけど文字で読んだ人の心の中では絵になってる。すごいこれ。

そのすごいの後、スケールは大きいけど比較的静かな感じで物語は終盤を迎えます。
読後感は、子供の頃『火の鳥 未来編』を読んだ時感じたものと似ているような気がしました。
気が遠くなるようなものをはっきり正面から見せてもらったあの感じ。

訳者あとがきによると、三部作の第2部まではSFファン以外の一般読者に広く受け入れられるようにしたけれど、第3部は内容的にそれは無理で、作者、劉 慈欣は「ハードコアのSFファンと自任する自分自身にとって心地よい “純粋な” SF小説を書くことにした」そうです。
そして結局このSFファンにだけ向けて書かれた第3部によってシリーズ全体の人気につながったのだそうです。
間口は広く、奥は深く、が当たった感じでしょうか。

長い長いシリーズだけど読んでよかった。すごいもん見せてもらった。
SFを読んでびっくりしたり不思議な感じを味わったり、現実ではありえない場面に興奮したことのある人は時間を費やして読む価値があると思います。たまげますよ。

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