宇宙に潜む(あるいは露わな)たくさんの “3”。大河SF小説『三体』を読んだら

読みたい読みたいと思っていたSF小説『三体』をやっと読めたい。
「三体」ってなんのことでしょう?

『三体』劉 慈欣 (著)

すごく面白い。という評判は聞いていたのですが、どういう面白さなのかはまったく知らないまま読み始めました。
なんでしょう。

読んでいる間の心の動きはざっくりと、

『大地の子』(山崎豊子)かよ!→ホラーかよ!→SFだよ!→やっぱり『大地の子』かよ!→SFだよ!→すげーよこれ!→ここで終わりかよ!

という感じでした。読んだ人にはわかってもらえるのではないでしょうか。
「訳者あとがき」にも、「『リング』ばりのサスペンス」というような記述がありますので、「ホラーかよ!」という感想は、特殊なものではないようです。

前半のそのホラー要素は後半で種明かしされます。
マジかよそれ!と思いました。
こういうのを「奇想天外」というのでしょう。かなり力業ちからわざにも思えますが、「ゲーム三体」のところでもっと超力業な世界が出てくるので、相対的にリアルに見えますね。巧妙です。

「三体」というのは、三つの天体が近くにあると重力の相互作用で、予測できない動きをするという、物理学の解けない命題だそうです。
それが物語の太い幹なのですが、そのほかにも人間たちのそれぞれの立場や勢力が、それぞれ「三体」として複雑な運動をして、面白い軌跡を描いているようにも感じました。

スケールでかいけど、目盛りの大も小もバランスよく書き込んであって、そのスケールの行ったり来たりで引っ張られ、やがて圧倒されます。

小説世界(と中のゲーム世界)で、人間スケールや宇宙スケール、その他さまざまなスケールの時間が行ったり来たり、並行して流れて行きます。空間的にも「陽子1個」から4光年の距離とかまで広がりがあり、理屈の部分の記述も多いのですが、読んでて置き去りにされない。人間の心理や行動が面白いから。

読んだことない奇想なのに、不思議な「懐かしさ」も感じました。
「誰も見たことのない突拍子もなさ」と、「誰でも知っているもの」を組み合わせることがヒットする映画の条件だとどこかで読んだことありますが、『三体』もその条件にはまってると思いました。「突拍子もなさ」が桁外れですが、それをつなぎとめる「誰でも知っているもの(誰でも共感できるもの)」も強靭だったのでしょう。

そんなにも面白かったばっかりに、読み終わった時の「ここで終わりかよ」という気持ちはとてもとても強いものでした。
でも大丈夫。
続きがもうすぐ発売だから。すぐ読める。設定や状況、キャラクターを覚えているうちに続きを読める。幸せ。

でもこの『三体』、三部作だそうで。第二部はすぐ読めるけど、第三部発行までは待たなきゃいけないですね。
どのくらい待つのかな?
この第一部の発行がが2019年7月となっていますから、第二部発行まで1年くらい空いたということですね。最低でもそのくらいかな。
でも、訳者あとがきによると、二部は第一部の1.5倍、三部は第一部の2倍くらいと、だんだん長くなるそうで、翻訳にかかる時間もそれだけ長くかかるかもしれません。

というわけで、続編が発行されたら速攻で読み始めることにします。第一部の記憶と衝撃が薄まらないうちに。

『三体2黒暗森林』は2020年6月18日発売です。

三体2 黒暗森林 上


三体2 黒暗森林 下

『三体』ってタイトル、素っ気無いと言うか、短編のタイトルみたいだなぁ、と思ってましたが、第二部にはかっこいいサブタイトルが付いてますね。「黒暗森林」。
森林?

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