テレビ版『ねらわれた学園』のころ原田知世ファンだった私。原田知世の大人の演技を楽しみに見はじめました。
しかし。大人どころかいきなり婆さんで登場です。
冒頭、老夫婦(メイク)の原田知世と永瀬正敏が病院の屋上で延々会話する場面があって(後で見たら12分くらいあった)、もうどうしていいかわからないというか、私が観てはいけない種類の映画なんじゃないかと思ってしまった。
私が見慣れている種類の映画なら冒頭の10分から15分というのは、その映画がどういう映画か観客にわからせるタイムで、登場人物の行動の動機とか、物語のつかみみたいなものを詰め込む時間ということになっているが、この映画は違った。 この老夫婦が何を語っているのかよくわからない。
日本語だからもちろん言葉はわかるのだが、何を語っているのかわからない。映画をひととおり観てから見直すともう少し意味がわかってくるのだが、そこで何か謎が解けるというようなセリフでもない。
そのあと昭和二十年の場面になるが、ここでもほとんど会話で物語が進行していく。登場人物のおかれた状況はわかってくるが、退屈。いつも見慣れている映画なら謎のセクシー美女が意味ありげな言葉を残してすぐ姿を消すあたりなのだが(どんな映画だ)。
原田知世とその兄嫁役の本上まなみが同い年の仲良しでって設定で、それもセリフで説明されるんだけど「えっ?そうなの?」ってひっかかっちゃって気が散ってしょうがない。同い年には見えなかったなー。
ようやく感情移入できたのが男二人が紙屋家にやってきて勝手に上がりこんだあたりから。
ここでのやりとりは笑いました。まじめで奥手な永瀬正敏にとてもとても共感できました。私の女性への対応力はあのくらいです。シミュレーションしてシミュレーションしてその三分の一も使えません。自分のその方面の能力は戦中レベルだと思い知りました。
やはり映画は感情移入して観たいもの。このあたりからじわじわきました。さりげないセリフもなんだかしみてきます。女性への対応力は同レベルでもまじめさは百分の一くらいの私ですが、まじめ人間にすっかり感情移入してました。
いつも見慣れている映画とペースとかリズムとか違うけどそれが心地よい映画でした。再見するとさらにしみ入ってくるでしょうか。
でも本上まなみじゃなかったなぁ。きれいすぎる若すぎる大きすぎる。あそこは、ちょっとふくよかで、あまり男に注目されることもなく、悦子に憧れているような容姿のほうが、後の、夫への想いを見せる場面でも生きたのではないだろうかと思いました。
で。
こうして感想を書いて、でもどうにも気になってもう一度冒頭の、病院の屋上のシーンを観直したのですね。どうにも気になって。ここだけ三回目になりますが。
そしたらどうにもまた印象が違う。点滴の時間だけどまだこうしていたいと言うじいさん永瀬。なんかしみるぞ。
続けて昭和二十年の兄夫婦の食事シーンも観ちゃうのね。すると、本上まなみがすごくよくみえてくる。天然の可愛い奥さんみたいなとこが(まぁ、きれいすぎるよな、とは思うけど)。
きっと、私の心は何かがしみこむには時間がかかるような表面状態になっちゃってるんだろうな。謎のセクシー美女もグチャベロモンスター(どんなのだ)とも一生つきあう覚悟だが、こういうしみてくる映画に身をゆだねるのも貴重な時間だな、と。そういう体作りもしとかなくちゃな、と思った53歳の夏でした。
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