1950年前後に作られた宇宙人侵略アメリカ映画は共産主義の脅威のメタファーだってあちこちで読んだり聞いたりしてなるほどそういうことなー、と思いこんでた。アカ狩りとかマッカーシズムとかそういう時代の話ね。
この映画なんかまさに隣人が外見も記憶もそのままで、でも違う存在になっちゃうってお話なので、おのれコミュニズム!の象徴的映画なのかな、と思って観てたんだけど、あらためて調べるとなんか違うみたいね。
むしろ反アカ狩りだったそうで。共産主義映画じゃなくてアカ狩りに反発した映画らしい。
そう思って観ると全然印象変わる。
周囲の人間がアカ狩りでどんどん転んでいく映画。姿形も記憶も同じだけど愛情だけがない。周囲の人間がみんなそうなってゆく。
以前と変わらない生活をしてるようなので、愛情だけが無いって具体的にどんなんだよって思うけどみんながそう言うんだからそうなんだろ。
反共映画だと思って観ればそう見えるし、反アカ狩り映画だと思って観ればそう見える。本当に恐ろしいのは都合で人の心を変えようとする大きな力だよ。
1956年公開だから、かれこれ60年前の映画。還暦。還暦ムービー。原作はジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街(The Body Snatchers)』。
ジャック・フィニイといえば『ゲイルズバーグの春を愛す』が好き!って言っとけば各方面に大丈夫な作家なんだけど、この原作はどうなんだろ?SFは反共もアカ狩りも超越した価値観であってほしいなと思いますが未読なのでわかりません。
60年前の映画に突っ込むのもなんだけど、人が入れ替わるシステムがよくわかんないとこがあった。
最後のベッキーの件とか。そんなとこにこだわる映画じゃないんだけどさ。
住民みんなボディをスナッチされてしまった街をからがら脱出した主人公のマイルズ(ケビン・マッカーシー)が道路を行き交う車の流れに向かって叫ぶ。
「次は君だ!」
しかし、どんなに訴えても車の流れは止まらない。
監督はドン・シーゲル(Don Siegel)。『ダーティーハリー』の監督ですね。肩甲骨が美しいヒロインのベッキーはダナ・ウィンター(Dana Wynter)、主演のケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy,)は、『ハウリング』『トワイライトゾーン』『インナースペース』にも出演している、そのスジのファンには大事な俳優さん。
この映画は日本劇場未公開だったそうですが、他に1956年の映画には『禁断の惑星』『理由なき反抗』『十戒』『1984』などがあります。アメリカ映画の大作がカラー化していった時期なのかなぁ。日本映画はまだモノクロが多かったみたいです。江利チエミの『サザエさん』とか。
ボディスナッチするのが豆のサヤじゃなくてサザエの貝殻だったら?って今ちょっと思いましたがどうでもいいですねそんなこと。
DVD近日再発売だそうです(2016年6月現在)。
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