というわけで、劇場版機動戦士ガンダムも最終作『めぐりあい宇宙編』までたどり着きました。
ガンダムのテレビ放送が始まって37年。
白状します。
ニュータイプってなんだかよくわかりません。
ニュータイプアムロ+新型モビルスーツガンダム=赤い彗星と互角の戦闘力
みたいな方便かと思ったらなんかもっと大袈裟なものらしいけどよくわからない。劇場版ではテレビ版より早めに「ニュータイプ」という言葉が出てきますが結局わかりませんでした。
それから、シャアが何をやりたかったのかさっぱりわかりませんでした。
ア・バオア・クーでのアムロとのやりとり、そのあとのセイラとのやりとり、半分も理解できませんでした。きっと私がニュータイプじゃないからでしょう。
あと、ララァが死ぬ前に言ってたことも何が何だかわかりませんでした。つーかララァは終始なに言ってるかよくわかんなかった。
それもこれも私がニュータイプじゃないからでしょうよ。ああそうでしょうよ。
37年かけてもわからない。この先もずっとわからないのでしょう。
でも、わからないからダメな作品かというとそんなことはまったくなくて、私は、「わかんないけどなんか面白い」映画やドラマや小説が大好きです。
なぜなら「わかんないとこ」を考えるのが好きだからです。
なぜ HAL は人間の宇宙飛行士を排除しようとしたのか?
なぜアンドレイ・ルブリョフは絵を描かなくなったのか?
なぜトラヴィスは大統領候補暗殺に失敗した後に少女娼婦を救ったのか?そもそも少女は救われたのか?
謎があるおかげで、見終わった後もその作品について考え、関係を保つことができる。これ大事。
ガンダムに関しては続編やらなんやら大量にあって、それを丹念に観ていけばわかることもあるかもしれませんが、まったく観てないのでなんとも言えません。
この『めぐりあい宇宙 編』あたりの話は、テレビ版では作画監督の安彦良和氏が病気で現場を離れ、絵の感じがちょっと変わったり、放送期間が短縮されたりした不遇の時期で、それだけに劇場版に対する期待は大きかったように記憶しています。
新しく絵を描き直したシーンは前二作よりずっと多く、その点では見応えがあるが、物語としてはクライマックスに向かうため、はずせないエピソードが多く、ちょっと駆け足気味になっているように感じた。
ただ、「ちょっと足りないな」と感じながらも、スレッガーがミライを殴るシーンとか、刺さるんだよねぇ。テレビ版を観ていたファンには最小限足りるように作られてたってことかな。テレビ版でいう「コンスコン強襲」とか、ソロモン攻防戦とか、ア・バオア・クーの決戦とか、大きな戦闘はスケール感をなくさないように入れて、2時間20分の上映時間に納まっているのはすごいなぁと思う。
ミライとスレッガーの別れのシーンもちゃんとあるしさ。ちょっと唐突な感じもするけど。あれじゃミライが、殴ってくれる男に惚れちゃう性癖の女に見えちゃう。
そうなの?
しかし。ホワイトベースのおっかさんの意外な性癖が垣間見えたりする中、今回も一番良かったのはフラウ・ボウ。
だって、あのア・バオア・クーでの激しい白兵戦を、子供三人の面倒を見ながら生き延びたんだよ。すげーよフラウ。君は強い女の子だよ。
というわけで、劇場版三作を54歳になった今観なおして一番良かったのはフラウ・ボウに決定。
脱出が始まるクライマックスで、アムロがテレパシー(的な何か)で「僕の好きなフラウ」と話しかけるシーンでは泣きそうになった。
今回劇場版三作を観て、テレビ版を観た高校生のときにはなんとも思わなかったシーンが妙に心にしみたりして面白かった。当たり前だけど年齢に応じて感じることが変わるんだなぁと実感。
全然関係ないけど『寺内貫太郎一家』とかこの間観たら深いのねー。子供のころはゲラゲラ笑えるコメディ、ちょっぴり人情、くらいにしか思ってなかったけど、左とん平とかすごく哀しい男だったんだねぇ。向田邦子は偉大だなぁ。
次は六〇歳になったらもう一度観てみましょう、ガンダム。還暦ガンダム。赤いちゃんちゃんこ着てね。孫と一緒にね。
「どうじゃ、ニュータイプが宇宙の未来を切り拓くのじゃ」
「じぃじ、にゅうたいぷってなぁに?」
「うぐ。そ、それは、」
還暦を迎えてもニュータイプってなんだかわからないジジィ(私)でした。
あ、あと「エネルギーゲイン」もどういう意味かわかんないんだよね、この37年間。
わかんないからそれが5倍だろうが 100倍だろうがすごさがわかんない。
でもいいや。ガンダムおもしろいから。
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