監督が『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレスってこと以外ほとんど予備知識のないまま鑑賞しました。
時間が行ったり来たりするところは『シティ・オブ・ゴッド』と共通していましたが、それ以外はずいぶん印象が異なる映画でした。
以前読んだ脚本の書き方の本には、「娯楽映画は最初の10分から15分でどういう映画か観客にわからせなきゃダメ」みたいなことが書いてあって、そういうもんなんだと思いましたが、この映画は10分経っても20分経っても3、40分経ってもどういう話なのか私にはわかりませんでした。
最初は「痴情のもつれもの」かな、と思いましたがなんかそうでもなく。
謎を追うサスペンスものではあるんだけど、イギリスの外交官である主人公が追っている謎がなかなかはっきりしない。
というか主人公が分かったことしか(ほぼ)観客にもわからないので、じわじわとしか分かってこない。
注意深い人ならセリフやシーンで構造が分かるのかもしれませんが、私は本当に観ている間主人公のように迷ったり疑ったり途方に暮れたりしていました。ある意味正しい鑑賞だったかもしれません。
そんなふうに感情移入というよりは主人公と一緒に右往左往していた私にはとてもショックな結末を迎えるのですが、終わってみれば映画の冒頭で受けた印象とそんなにずれてないというか、夫婦の愛情で貫かれた物語だったんだな、とわかります。
妻への愛情(時には疑い)が、主人公の行動の動機なんですが、その過程で見せられるものは世界規模の嫌なスキャンダルがテーマで、考えると気が重くなります。
しかも製薬会社の新薬開発に関するスキャンダルなので、コロナ禍の真っ只中の今観るのはちょっときついかもしれません。観ちゃったけど。
新型コロナの薬は早く作られて欲しいけど、この映画みたいに貧しい人々を犠牲にするようなやり方で作ってはダメですね。
知らなかったのですがこの映画、原作がジョン・ル・カレの小説なんですね。『寒い国から帰ってきたスパイ』の(他にもたくさん有名作品があるけどこれしか読んでない)。
Wikipediaにはこれを書いたきっかけとなるエピソードが書かれていました。また、現実は小説よりもっとずっと悲惨なんだ、ということも言っていたらしいです。
原作未読ですが、夫婦の愛情だけは真実だったという救いを入れなければあまりに救いがなかったのかもしれません。
あと、アフリカの景色は雄大で見入っちゃいましたね。そこで悲惨なことが次々に起こるのですが。
というわけで。
重いテーマながら絵的にアクティブでトリッキーなおかげでカタルシスを得られる『シティ・オブ・ゴッド』と違って、重いまま悲惨な結末を迎える映画でした。気力が充実している時に観るのがいいかもしれません。
まぁでも、原作を先に読めばよかったかなぁーと今思ってます。
でも長いんだよねぇ。文庫で上下巻。760ページくらいある。
「いつか読む本リスト」に入れとこう。
うがい手洗い怠らず、仕事はしっかり怠って、長生きしてたくさん本読まなきゃ。