「サイクス=ピコ協定」とか学校で習うのかなぁ?と、娘にもらった世界史の教科書を見たらちゃんと載ってました。
第一次世界大戦中に、中立国を味方に引き入れるため、戦後の領土分配を約束した秘密条約の一つが「サイクス=ピコ協定」というようなこと書かれていました(「条約」と「協定」は厳密には違うものだそうですが)。
「勝ったらこの辺やるから味方になってね」という、協定を結ぶ当事者には合理的かもしれないけど、そこで生きて来た人からすれば「なに勝手に決めてんだよ」なサイクス=ピコ協定。
そのサイクス=ピコ協定まわりのことをわかりやすく解説してくれる本です。
『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』池内 恵/著
著者は「サイクス=ピコ協定」を「分かった気にさせるマジックワード」と呼んでいます。
いわゆる「中東の混乱」を話題にするときに、その原因を「イギリスとフランスが、サイクス=ピコ協定によってアラブ世界に不自然な国境線を引いたからだ」とまとめてしまう風潮に、「気持ちはわからないでもない」と言いながら、でもそれだけでは、現実を理解したり、将来を見通し解決策を見出すことはできないと、そもそもサイクス=ピコ協定が結ばれた背景から解説してくれます。
中東は複雑でこの150ページ足らずの新書ボリュームでもたくさんの国名、民族名、条約・協定名が出てくるので、概略を書くことはしませんが、中東って一体どうなってるの?とか、この数年のシリア難民の動向などに興味のある人は「ああ、そうか」と思うところがある本だと思います。詳しい人には自明のことなのかもしれませんが、私はその程度から読み始めて、わかりやすいいい本だな、と思いました。
最後の第5章では映画『アラビアのロレンス』について、当時の「中東国際政治やアラブ世界の政治社会の構造を」ナレーションなどで説明するのではなく、人物造形やセリフを通してドラマで見せていると高く評価し、いくつかのシーンの意味が解説されていました。
以前一度だけ観た『アラビアのロレンス』ですが、この解説を踏まえてもう一度観たくなりました。
と思っていたら偶然7月30日にNHKのBSで放送されるそうです( →NHKの映画紹介ページ)。長い映画なので(3時間47分!)、録画してお盆休みにでもゆっくり観ることにします。
Amazon primeビデオでもレンタル配信してますね。