じわりと泣ける映画『家へ帰ろう』“El último traje”を観たら

夏といえばロードムービー。
なんて聞いたことありませんが、今回は感動の(と紹介文に書いてあった)ロードムービー『家へ帰ろう』を鑑賞しました。

毎回こんなこと言ってますが、どんな映画か何も知らずに観ることをお勧めします。
映画の紹介文に主人公が旅に出る目的とか書いてありますが、それも観ない方がいいです。宣伝コピーもある意味ネタバレです。
サスペンス映画とかではありませんが、登場人物の言動の意味がだんだんわかってじわじわ沁みるからこそ最後に大きなものを得られるのです。急いではいけません。この映画は結末を知らないまま鑑賞しましょう。
私は「え?」と思った瞬間体中がゾワゾワゾワっとなってぽろりと泣きました。あー!こういうのも読まない方がいいってば!

というわけなので私のこんな紹介など読まずに今すぐ映画を観ましょう。今ならAmazonプライムビデオのプライム対象になってます。
あ、ひとつだけ。
マドリードのレストランにいたピアニストは仲代達也にそっくりだったよ。そこにも注目だ。

家へ帰ろう(字幕版)

アルゼンチン在住の主人公アブラハムは頑固爺さん。娘や孫に囲まれていても憎まれ口ばかり。
そして捻くれ者。おじいちゃんに嘘をついてお金をむしりとる孫娘を褒めたりします。
でもなぜそんななのかだんだんわかってきます。
それは今までの家庭の事情と、さらにアブラハムの子供時代まで遡って語られていきます。

現在の状況にどうにも我慢できなくなったアブラハムは誰にも告げずに家を出てポーランドに向かいます。
アルゼンチンからポーランド。多分ですが、三千里くらいあります。足が悪く、その他どうみても健康には見えないアブラハムはそんな長旅に耐えられるのでしょうか?

宮崎駿の昔のインタビューに、「(映画に関して)間口は広く、奥行きは深く」みたいな言葉が出てきて、映画その他フィクションを鑑賞するときに「間口」や「奥行き」を考えるようになりました。
「間口」は「掴み」かもしれませんが、「掴み」っていうとなんかわざとらしい使い捨て感があってちょっと違うかな、と思います。

この『家へ帰ろう』では、老いることの寂しさや娘たちとなんかギクシャクしてるとかそれでも孫は可愛いとか、普通の出来事が描写され、アブラハムがなぜこんなに頑固で捻くれているのか、なぜ祖父に嘘をつく孫娘を褒めるのか、だんだんわかってきます。
そこにはアブラハムの哀しい過去の体験が深く関わっていたんですね。

原題の『El último traje』はスペイン語で「最後のスーツ」という意味だそうです。アブラハムの旅の目的に関わる言葉ですね。邦題の『家へ帰ろう』もいいタイトルだということが最後まで観るとわかります。

で、アブラハムさん、どこへ行っても助けがなければ旅が続けられないような事態になります。
そしてそのたびにいろんな人に助けられます。助けてくれるのはほぼ女性。
そう何度も誰かに助けられるのって不自然になりそうですが、あまり気になりませんでした。
というか、過去の出来事が語られるにつれ、アブラハムのこの旅の目的を果たさせてやりたいと強く思うようになっていたからかもしれません。
女性が親切でおせっかいな方が自然に見えるような気もします。
あと、アブラハムさん、若い頃はモテモテだったのかな?とか思いました。余計なお世話ですね。

最初に書いたように最後で泣いてしまったのですが、それはちょっと濃い涙だったような気がします。

公式サイト →映画『家へ帰ろう』公式サイト

公式サイトで見られる予告編の最初に「観客総ナメの感動作!!」と大きく出るのですが、あれは多分「観客賞総ナメ」の間違いだと思います。
感動したのにそこで笑わせんなよ。観客ナメてんのか?そうかナメてんのか。

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