怖い怖いと評判だったのでそんなに怖いものかと観たら怖いでした。
「なんだかんだ言って人間が一番怖い」というようなことをちょくちょく聞きますが。
本当に怖いのは「人間」と「悪魔だか悪霊だか地獄の王様だか」のコラボだということをこの映画を観て思い知りました。
おばあちゃんのお葬式に行くから早く起きなさい。
お父さんが子どもたちを起こして回ります。
息子ピーター(高校生くらい?)は自室のベッドでもぞもぞしています。
この年頃の男子っぽくも見えます。
妹のチャーリー(小学生くらい)は、庭のツリーハウス(木の高い所に建てられたハックルベリーの小屋みたいのね)で寝ていました。
お母さんアニーは庭に停めた車の中でぼーっとしてます。
後でわかりますが、死んだおばあちゃんはアニーのお母さんです。
全体に変な雰囲気です。
おばあちゃんが死んで、家族が悲しみに包まれているようにも見えますが、そうではないことが徐々にわかってきます。
お父さん以外なんか変ですこの家族。
特に娘のチャーリー。変です。
おばあちゃん子だったようなので、悲しみのあまり変になっちゃったのかな、とも思いましたがそうではありませんでした。
悲しみのあまり鳩の首を切断するような子はいません(たぶん)。
「娘が変」といえば『エクソシスト』を思い出します。
そういう映画なのかな?と思ってチャーリーの発する一言一言、一挙手一投足、一舌打ち、すべて気になりますが、途中でショッキングな出来事があり、そうではないことがわかります(が)。
「こういうお話かなー」と頭で組み立てていたものがぶった斬られます。
細かいところまで集中して観ていたのでこれはなかなかショックでした。
ただその大ショックな出来事への反応がなんか変ですこの家族。
悲しみは悲しみで感じてはいるけどどこか諦めているような感じがあります。
もうなんだろ。
何が起こってるんだろこの家?
この本なに?
このメッセージどういう意味?
このおばさん誰?
写真に写ってるの誰?何やってんの?
あの光は何?
みたいな感じで、細かい「?」が???と積み重なっていきます。
妄想だか想像だかのシーンもチラチラ入って、どういう話だか理解しようとする観客の気持ちはズルッズルッと逸らされます。
それがクライマックスで、ザザザザッと、たくさんの「?」がザザザザッと一方向に流れ出します。
それまでじわじわ不穏で怖い感じだったのが、「うあっ!」と脅かすようなシーンも出てきます。っていうかそんなシーンばかりになります。
んで、すごくいや〜な結末を迎えます。
ホントすごくいや〜な感じ。
オカルトとかホラーとか超常的なものでなくとも、自分と価値観が全く違う人間に取り囲まれたらものすごく怖いんだと思い知らされました。やだやだ。
いちいち『エクソシスト』と比べる必要は無いのですが、『エクソシスト』には神父さんとか、そのスジに対応できる人が出てきますが、こちらはそういう人が一切出てきません。「そういう人」かと思ったら「ヲイヲイお前」だったりします。
「こうすりゃ助かる」みたいのが全く無い怖さ。そもそも何と闘えばいいのかわからないまま話が進んでくし。
ホラー好きには必修だと思いますが、そんなでもない人はわざわざいや〜なもの観ることないかな、って気もします。
ただ、そういう「いや〜な感じ」があんまり後を引かないような気もします。
私が歳を取って鈍くなっただけかもしれませんが。
あ、そうそう。
「Hereditary」ってどういう意味か調べたら「遺伝性」って意味だそうです。
こんなのが遺伝性だとしたら逃げ場が無いにもほどがありますね。
「継承」はイップマンだけでいいよーと思った秋の夜でした。