ネットで検索されないもの。Miranda July ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの IT CHOOSES YOU』を読んだよ

活字の子 活字の子

雑誌映画秘宝で紹介されていて面白そうだったので読みました。
著者 Miranda July は、自分で脚本、監督、主演して映画を作ってしまう女性。第1作の『君とボクの虹色の世界』で、2005年のカンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞したそうです。私は全く知りませんでしたが。

本書には、2作目の長編映画『ザ・フューチャー』の脚本に行き詰まり、打開するために始めたある行動と、行き詰まりが打開されるまでが書かれています。
「ある行動」というのは、無料配布で毎週火曜日に郵便受けに届く『ペニーセイバー』(いろいろなひとの「売ります」広告が並んでいるザラ紙に印刷された小冊子)をすみからすみまで読み通すこと。
なぜそんなことをするかというと、(行き詰まっている)脚本執筆に取りかかりたくないから。
『ペニーセイバー』には様々なひとが様々な物を売りに出していて、やがて彼女は売り手のことをもっと知りたくなり、広告を出している人たちにインタビューすることを思いつき実行する。
脚本執筆からの逃避兼打開策さがしだが、才能のあるひとは逃避も何かを「実行」するんだなと感心。「停止してしまわない」というのが身についているんだろうか。

インタビューはカメラマンのブリジットとアシスタントのアルフレッドと三人で売り手の自宅を訪問する形で行うことに。
“アルフレッドについてきてもらったのは、レイプ防止のためだった”
とさらりと書いている。

こうしてミランダの風変わりなインタビューが始まるが、売り手や売り物のどちらか、または両方がなんか変わってる。
人物の「変わってる具合」は読まなきゃわからないところだけど、売り物で私が「え?」と思ったのは、「他人の写真アルバム」。
自分の写真アルバムを売ってたらそれも変だが、「他人の」って。
「ウシガエルのオタマジャクシ」にも「へぇ〜…」。

売り手の自宅でのインタビューのため、彼らの人生に踏み込むことになり(そもそもそれが目的なのだが)、ちょっとまともでない受け答えをする人物に恐怖を感じたりすることもあるが、大抵は切ないというか、あまり恵まれていない、不器用で、うまく立ち回れないひとが一生懸命生きてる、というような印象を受ける。
経済的に恵まれていないのと、それが理由のひとつでもあるが、みなパソコンを所有していなくて、ネットを利用する環境がない。
ここは著者がこだわってるところで、インタビューしたみんなに質問している(そもそもそれだから『ペニーセイバー』を利用してるんだけど)。
彼らはネットで検索しもされもしないひとたちなのだ。

ネットに接しない人々はなぜ切なく見えるんだろう?
なんかこう世界から疎外されているように見えちゃうんだろうか?
疎外どころか存在しないように思われかねない。
大抵のひとはネットで検索することはあっても自分が検索されたりはしないけど、でもそれが寂しくてFacebookとかTwitterとかやるんだろうか。
自分がネット中毒に近いからそう感じてしまうのだろうか。
そもそもミランダ・ジュライもネット中毒だったのだが、脚本の行き詰まりを打開する方向を探っていて、こちらに解決の道があると感じたんだろう。才能のある人は鼻が効く。そして実行する。

最終章のタイトルは

“Shooting”(撮影)

映画『ザ・フューチャー』の撮影は開始されたが、まぁあらゆるトラブルが起こって、思い出したくないと著者は記している。
トラブルの内容に関しては書いていないが、本書に関わりのある出来事についての記述が最終章になっている。
なんとまぁ行動の果てにはドラマがあることよ。
検索されようがされまいが、そこに生の人生はある。

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私は映画『ザ・フューチャー』は未見ですがソフトが出ています。いつか観るリストに記入しました。”ザ・フューチャー”で検索するとこの映画の下に「バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズがズラッと並びます。どうでもいい話だけどさ。

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