映画『宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島』を観たよ

三船敏郎版宮本武蔵三部作完結『宮本武蔵 完結篇 決闘巌流島』を観ましたよ。第二部の翌年、1956年の映画。

前回まではオープニングで、俳優の名前の上に役名が明記されていましたが、今回は俳優の名前のみ。
なんでそんなところを気にしているかというと、第一部で三國連太郎だった本位田又八が第二部で堺左千夫に代わっていたので、第三部でどうなるのか気になっていたからです。
名前を目で追っていましたが「堺左千夫」の名前は見つけられませんでした。
こりゃ、また交代か?今度はどんなに情けない奴なんだ?と楽しみになりました。
が、その話だけ結論から言っちゃうと、出てきませんでした。又八。
もっというとお杉ばばぁも出てきません。本位田家は第二部でその役目を終えたようです。

完結篇は、佐々木小次郎がツバメを叩き斬る残酷シーンから始まります。
その後武蔵が宝蔵院の槍と戦うシーンが続くというなかなかハードな幕開け。
と思いきや、武蔵がだんだん人間ができてきて、ちょっとおとなしい展開に。原作では、後半で人間ができて無茶をしなくなった武蔵の代わりに小次郎の冷たい乱暴者ぶりが娯楽アクションの要素になっていきますが、小次郎役が鶴田浩二だからでしょうか、こっちも妙に人間ができてる様子で、原作では計算ずくの、試合で打ち負かした相手への見舞いも、本気でいい人として描かれている。
一方武蔵は、三部作の余裕からか、農業に従事する皆さんとの交流も描かれ、さらに立派な人物に。

原作からいい具合にエピソードを抽出して、並び変えたりもして、アクションやら恋愛やら完結篇にふさわしい盛り上がりを見せてくれます。
武蔵も小次郎も立派な人として描かれたためか、最後の決闘も、武蔵が遅れてきたことも、小次郎支持者が勝敗に関わらず武蔵を生かして帰さない備えをしていたことも特に強調はされません。見てればわかるっちゃーわかるけど、それを卑怯だとかなんだとかは誰も言いません。

朝焼けの中海岸線で対峙するふたり。この剣豪同士の崇高な対決のためにどちらかが策を弄したというような印象を与えないつくりにしたんでしょう。そういえば刀を抜いて鞘を捨てた小次郎に武蔵もツッコミを入れたりしません。崇高な対決だから。
決闘の結末はネタバレになるので秘密ですが、この決闘シーンは『さよならジュピター』に使われていましたね。モノクロになっていましたが。本当は黒沢明の映画を使いたかったのではと勘ぐってしまいますね、このモノクロ化。

というわけで、三部通して鑑賞しましたが、この完結篇がいちばん面白かったですね。ってそりゃそうか。

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