扉を開くために血を捧げよ。血まみれファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』を観たよ

今回は最初にソフトの広告リンク貼っておきます。
が。
ぜんぜんこのジャケットから想像される内容じゃないんです。

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このジャケットのイメージや、ジブリアニメ『千と千尋の神隠し』、『となりのトトロ』を連想させるシーンがある(冒頭や、森の中、よつんばいで大木の内部に潜り込み、異質なものに出会う)みたいな噂を聞きかじって小さなお子さんと鑑賞するとひどい目にあいます。せめてお子さんが中二病を患ってからにしましょう。

ではどんな映画かというと。

1944年のスペイン。内戦終結後も反独裁政権の武装勢力が山中で戦い続けている。少女オフェリア(イバナ・バケーロ)は、臨月の母とともに戦闘地域にある政府軍の砦へ向かう。オフェリアの父親は戦争で死亡。母親のお腹の中にいるのは、砦で政府軍を率いるビダル大尉(セルジ・ロペス)の子ども。

オフェリアが砦へ向かう道中に見かけた大きな虫を「妖精」だと感じるのは、普通の感覚からするとおかしいと感じる人もいるだろうが、世界がこんなにつらくて狂っているんだから不思議ちゃんの物差しの目盛りも現代日本と大きくずれていて当然なのだ。
オフェリアは妖精(デカイ虫)に導かれ、深夜、ベッドを抜け出し、迷宮の守護神パンと出会い、自分が地下の「魔法の王国」の姫君、モアナ王女であると告げられる。
ここに至るまでにビダル大尉の残虐さがいやってほど描かれている。ほんとやだこいつ。

パンはオフェリアに「道を標す本」を渡し、満月の夜の前にそこに書かれている三つの試練に耐えれば魔法の王国に戻れるのだと告げ、姿を消す。
オフェリアは本に現れる(普段は白ページで何も書かれていない)試練を順にクリアしていくが、その間もビダル大尉の残虐な(以下同)。
試練は大木の根元の大ガエルをなんとかしろとか、魔法のチョークで扉を描いてその中でなんかしろ、でも飲んだり食ったりしちゃだめだぞ、とかいうもの。
第2の試練に出てくるペイルマンというモンスターが不気味でほんと好き。でも怖ぇーの。

そして第3の試練は、(ビダル大尉が支配している)現実世界と関わらなきゃならないものなんだけど、この結末(書かないけど)は、スペイン内戦や、独裁政権と闘って命を落とした人、そしてそれだけじゃなく、未来の子どもたちを犠牲にせず、自ら血を流すことを選択した者が報われてほしいという願いとか祈りみたいなものがこめられていたんじゃないかと思った。
だからか、エンドロールの音楽はとても優しく聴こえてくる。

監督ギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)には手書きの創作ノートというのがあって、これがまぁめちゃくちゃ濃いうえに丁寧に仕上げられていて、もう作品の域。
それに本人の解説を加えて書籍化したのが『ギレルモ・デル・トロ 創作ノート 驚異の部屋』。

『パンズ・ラビリンス』はもちろん、『クロノス』から『ヘルボーイ』2作、『パシフィック・リム』まで、さらに未完プロジェクトに関するノートも見られる素晴らしい本。原作のヘルボーイが人間離れした(まぁ人間じゃないけどさ)なで肩なのを実写映画でどう処理しようとしたかとか、面白いネタ満載。

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その『ギレルモ・デル・トロ 創作ノート 驚異の部屋』からの『パンズ・ラビリンス』豆知識


1.英語タイトルは『Pan’s Labyrinth』(原題は『El laberinto del fauno』)だが、Panという言葉はどこにも出てこない。迷宮の守護神の名前はFaunで、それをパンとしたのは日本語版のみ。

2.パンとペイルマンは同じ役者ダグ・ジョーンズが演じている。

3.劇中に出てくる階段の手すり、ドアというドアにパンの顔が彫り込まれている(サブリミナルかよ)。

4.デル・トロ 監督は7歳になる前のクリスマスプレゼントにマンドラゴラの根を頼んだ。

そんなわけで、デカイ虫とか、ちょっと不気味な妖精とかに抵抗がなくて(むしろ好きで)、マンドラゴラの根が欲しいとか大判の本が出てくるだけで幸せ、って人には強くお薦めできる2006年のメキシコ・スペイン・アメリカ合作映画。日本公開は2007年。また観よっと。

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