ああもう現実なんて嘘や保身や欺瞞だらけで面白くもなんともないばかりかババァが運転するレクサスが真横からぶつけてきたくせにウィンカーつけて一台やり過ごしてから確認してハンドル切ったとか言い張って孫を迎えに行くからこのまま行かせてくれ「私は逃げも隠れもしない(嘘はつくけど)」とかぬかすようなそんなうんざりすることばかりだ(←実話)。
そんな時は楽しい映画。現代社会の闇を鋭く抉る隠れた名作、なんてのじゃなくてね。
というわけでこれ『エノーラ・ホームズの事件簿』。
エノーラ・ホームズというのはシャーロック・ホームズの妹ですね。
ホームズ兄弟の中で一番優秀なのは末っ子のエノーラ、というのを他のドラマのセリフで聞いたことがあります。コナン・ドイルの原作でもそういう設定なのかは知りません。
『ストレンジャー・シングス』のイレブン役で有名なミリー・ボビー・ブラウン(この名前なかなか覚えらんないんだけど)がエノーラ役です。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にも重要な役で出てた人ですね。
『ストレンジャー・シングス』での演技が絶賛されていたミリーですが、この映画もなかなか難しい役だったと思います。『ストレンジャー・シングス』で鼻血垂らしてたあの子がなぁ…。
冒頭、原っぱを自転車で疾走する少女(エノーラ)が観客に向き直って自分の生い立ちを語り始めます。
こういう演出って、一歩間違えると悲惨に滑りまくる危険がありますが、軽快な音楽と自転車の疾走感、インサートされるエノーラの幼い頃の映像のリズム感、そして何よりミリー・ボビー・ブラウンの生き生きした表情が、このシーンをとても魅力的にしています。
この冒頭の5分くらいで、エノーラがどう育てられて何ができるか、どういう少女かわかります。そしてこの映画が緻密に計算されて作られていて、その計算通りに楽しい映画だと確信できます。たまにありますよねそういう映画。
『モンティ・パイソン』のアニメみてぇだな、と思うような演出がいくつかありましたが、イギリス映画なんですね。柔術の技をパラパラ漫画で紹介するとことかすげー好き。あとエンディングもかわいかったです。
なんでしょう。ユーモアだけでなく、「圧倒的に厚みのある全般的なセンス」を感じます。
「Netflixオリジナル」となっていますが、元々はそうではなく製作された映画がコロナ禍で劇場公開できずに、Netflix配信となったそうです。
「コロナ禍で劇場公開できない」というのは哀しいですが、劇場公開だったら観てなかったような気もします。こんな楽しい映画。Netflixよありがとう。
中学生や高校生くらいの若い人が観たら一生忘れられないものを得られるいい映画だと思いました。
とはいえ、58歳の私でもこんなに楽しめたんだから、役者が観客に話しかける演出は生理的に受けつけない、って人以外は誰でも楽しめるんじゃないでしょうか。