アメリカ国内の分断や貧困の原因の大きなひとつ、度外れた大金持ちがいかにして自分の資産を守り増やすためのシステムを作り上げているか書かれた本です。
いやもうすごいですね。お金の使い方が豪快で。
大金持ちが大金を出し合って政治を動かし、自分たちの事業に有利になるような法律を作ったり不利になる法律を潰したりしてるそうです。
それだけなら「行き過ぎたロビー活動」って感じですが、それだけじゃありませんでした。
直接的な政治資金には制限があるので、政治に関係ない公共性の高い(振りをした)NPOを作って大量の資金を流入して、巡り巡って政党や議員に流れ込むシステムを作っているそうです。
だけじゃなく。
メディア、大学、シンクタンクも大金を使ってコントロールしているとか。
世論操作どころかもう大掛かりな洗脳みたいなことしてます。
環境問題の解決や、国民の命や健康のためになることは彼らの資産に不利になることらしく、常に標的になります。
選挙を有利にするために選挙区の区割りを変えたりもします。この操作のことを「ゲリマンダー」とか「ゲリマンダリング」っていうんですが、いかにも悪そうな語感ですよねゲリマンダー。改造人間とか作ってそう。
そして、そんなことする大金持ちの中心にいるのがコーク兄弟とやら。
全く知りませんでした。コーク兄弟。
コーク家についても紹介されていますが、もともと大金持ちで、資産をめぐって親族の争いがあったりで大金持ちはそれはそれで大変みたいです。
希望に溢れてスタートしたオバマ政権が諸々うまくいかず、尻つぼみな印象で終わったのも彼らにことごとく妨害されたからだと書かれています(それだけではないが、とも書かれています)。
桁外れの大金があればなんでもできるんだなぁ、とむしろ感心しちゃいますが、時々失敗しますコークたち。
アメリカのまともな法律や規制が勝利することもあるんです。わずかながら希望の光もあるんですね。
ただ、相手が反則し放題なのに立場上法律尊守で戦わざるを得ないのは辛いだろうなぁと思います。タイガーマスク(アニメ)を思い出しますこの戦い。
原著が2016年に書かれているので、トランプ大統領誕生直前でしょうか。こういう勢力がトランプ大統領を生んだのかと思いましたが、コーク兄弟一派とトランプは仲が悪いようなことが書かれていました。ただいわゆる「ベクトルは同じ」ってところでしょうか。
正味約600頁プラス索引と注約70頁の大著ですが、とても面白かったです。
この本を読んだのは、スティグリッツの『プログレッシブ キャピタリズム』という本で言及されていたからです。
『PROGRESSIVE CAPITALISM』スティグリッツ
こちらも正味約350頁、原注110頁の読み応えのある本でした。
『ダーク・マネー』と比べると穏健な内容ですが、「ベクトルは同じ」ような気がします。
分断を解消するのには「中流」を厚くし、「公共の富」を再定義して守ることが必要だと言っています。
そしてそれを阻害しているのは「独占」だと言っています。
蹴落とされて助けを求めている人に「自己責任」だの「税金も払わないやつは黙ってろ」だの言う人はこういう本を読むべきですね。
今回は2冊とも紙の本で読みましたが、注をこまめに読むためには電子書籍の方が良かったかなぁ、と思いながら読んでいました。
注番号をタップすると注が読めて、またタップすると本文に戻るように作られていれば、ですが。
まぁでもこういう厚い本を紙で読むのは「便利」とは違う価値があるんですよねぇ。そこはかとない幸せを感じます。内容はあれだけど。