570 イライラしてはいないけど

スーパーで買い物した後、どのレジに並ぶかは大きな問題である。
大きな。
問題である。

そうでもないか。

まぁできるだけはやくレジを通過したいのは人情でしょう。
はやくレジを通過するためのチェックポイントはみっつ。

  1. 列の長さ
  2. 並んでる客のカゴの中の品数
  3. レジ店員の能力

このみっつさえ見極めれば百戦危うからず。誰よりもはやくレジを抜けることができる。
3はややギャンブルだが場数を踏めば危うからず。たまに偉そうなおっさんがレジに入ってるがたいていダメ。

先日も会社帰りに駅にくっついてる東武ストアで買い物をした私はこのみっつの法則でレジの列を選んだ。
だがなぜか。
なかなか進まない。
あれ?
前をのぞくと先頭に老夫婦。
おじいさんが財布から硬貨を一枚ずつ取り出して会計の皿みたいのに乗せている。
まぁまぁ、お年寄りだしね。もう細かいの出してるからお会計も終盤戦だよね。最後のひと桁の勝負に入ってるよね。
ね。
見るともなく見ていると財布から出入りしていたおじいさんの手の動きが止まった。
終わったか。
終わったか。
レジのおねえさんは黙って両手で股間を隠すようなポーズで立っている。
え?
終わったんだよね?

おじいさんはゆっくり振り向き、後ろに並んでいたおばあさんに言った。
「いちえんあるかい?」

ああ。
一円ね。
一円でも足りないとね。ダメだよね。そうだよね。
一円を笑う者は一円に泣くっていうもんね。昔のひとはうまいこと言ったよね。

おばあさんは自分の財布を取り出してゆっくりかき回している。
たかが一円、されど一円。じっくり探せおばあさん。

おばあさんの短め白髪後頭部が左右にゆっくり振られた。

無かったか。そうか。無かったか。いちえん。
無いもんはしょーがねーや。だって無ぇんだもん。

おじいさんは黙ってうなずき、会計の皿に乗せた細かいお金を回収し始めた。
支払い方法の変更を決めたようだ。
私は、出入り口付近のスイカの山をながめて(ああ、こないだ海でスイカ食べなかったなぁ)などと右脳で考えながら、左脳ではスーパーのレジをはやく通過するためのチェックポイントを上書きした。

はやくレジを通過するためのチェックポイントはよっつ。

  1. 列の長さ
  2. 並んでる客のカゴの中の品数
  3. レジ店員の能力
  4. 並んでる客の平均年齢(高すぎても低すぎてもダメ)

以上。

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