劇場鑑賞時には不覚にも眠ってしまい、スリープ短縮版になってしまった『ブレードランナー2049』(参照→酸性雨の降りしきる丸の内で映画『ブレードランナー2049』を観たらhttps://oto-ra.com/?p=3771)。
その後ネットのネタバレ感想やら解説やらをいくつか読んで、自分がかなり大事なところでスリーピンだったことを知り、それにしても釈然としなかった『ブレードランナー2049』(参照→映画『ブレードランナー2049』がダメだった3つの個人的理由https://oto-ra.com/?p=4080)。
どんどん釈然としなくなる私でしたが、今回ソフト(Blu-ray)を購入し、鑑賞しました。
もう、寝たきゃ寝て、場面を見逃したらまた戻って観ればいい自由を手に入れました。ソフトって素敵。
これで釈然としなければ一生釈然とは無縁でしょう。
で、どうだったかというと、私なりにかなり釈然としました。
まず、私は未見でしたが、ネットで公開されていた前日譚『ブレードランナー ブラックアウト2022』『2036:ネクサス・ドーン』『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』の三本の短編が収録されていて、これを観ることで本編世界を理解する手がかりになりました。
アニメの『ブレードランナー ブラックアウト2022』はともかく、他の二本は短編というより「削除されたシーン」みたいでしたが。
このふたつのエピソードを本編の頭にくっつけとけばもっとわかりやすかったのになぁ、とも思いました。
長い映画がさらに長くなっちゃいますが。
映画はできるだけ情報を入れずに観たい派なのですが、この三本の短編は観ておけばよかったなぁとちょっぴり後悔しました。
そしてふたつ目の未見、私がスリーピンで見逃した本編シーンは、やはり物語上かなりの大事パーツで、レプリカントに埋葬の概念があったとか、出産していたとか、要するに人間が人間である大事な要素がレプリカントにもあったことがわかってくるところで、その後の主な登場人物たちの行動は、全てこの事実を元に起こされます。
映画に魂が入る瞬間を見逃しました。僕のバカ。
ここを見逃してたら「こいつら何やってんだろ?」になって当然ですね。
今回鑑賞して思ったのは、そもそも身ごもるはずのない存在が身ごもって子どもを産む、というのはなにやら宗教的要素だな、ということです。少し前にパゾリーニ監督の『奇跡の丘』を観ましたが、そこに、「おとめがみごもり男の子を産む」という言葉がナレーションで語られていたのを思い出しました。
身ごもるはずのない者が身ごもり生まれるのは聖なる存在。レプリカントが聖なる存在を生み出す。人間はそれが許せません。
信仰に篤い人はこの映画自体を許せないかもしれません。
多くの日本人は気にしないでしょう。桃から生まれた子が英雄になるお国がらですから。
この映画の登場人物たちに感情移入するには、身ごもるはずのない者が身ごもり、生まれるはずのない子どもが生まれることの重い意味を感じなければならないのかもしれません。
主人公Kは自分こそ聖なる存在ではないかと思い込みそう望み、その証拠を求めますが、やがてそうではないとわかりひどく傷ついてしまいます。
自分もレプリカントなのに同じレプリカントを処刑して回る職についていることを、受け入れてはいるけれどやはり後ろめたくも思っていたK。
自分こそ聖なる存在ではないかという可能性に光を見たけれど、その光はすぐに消え、人工の、街の光ばかりがまわりにあふれる。
でもKは、生まれとかではなく、行動によって自分の存在を尊いものにしてゆきます。
というお話だったんですね(たぶん)。
自分なりに大枠が見えた(気がする)ので、少し時間をおいて、また鑑賞しようと思います。そのためにソフト購入したので。
ちなみに私はBlu-rayのこれを買いました。
ブレードランナー 2049(初回生産限定) [Blu-ray]
「初回生産限定」として、20Pのブックレット(なぜか大きくてケースに入らない)と、特典ディスクが付いてます。特典ディスクはまだ見てません。
聖なるものが生まれる、パゾリーニ監督の『奇跡の丘』もぜひどうぞ。