550 家に本棚があって幸せです

活字の子

電子書籍を拒否する気はさらさらないというか、実用していて、けっこう恩恵に預かってもいる。その良さを世に説いて回りたいと思ってるくらいだが、電子書籍のいいところは実は電子書籍のつまらないところだったりもする。私にとって、だが。
私はもうすぐ53歳になるので、ほぼ、書籍といえば紙の本しかない人生を歩んできた。祖父母は古本屋を営み、教育熱心な母が毎晩息子二人に本を読み聞かせるような環境で育った。
ので。
紙の本に愛着があって当たり前なのだ、ということを踏まえて以下お読みいただきたい。

歳のせいか、さして理由もなくイライラすることがある。
目の前の原因も無いのに不安で心が塞ぐことがある。
原因があいまいなので直接それを潰して解決することはできない。
あえて言えば自分の人生全般に対するイライラや不安なのだろうが、そんなものを解決できるのは「死」くらいなので、とりあえず考えないことにしておく。

そんな時私は自分の本棚を眺める。
そんなに、「蔵書」と呼べるような品揃えではない。
でも、さして金銭的余裕も無かった今までの人生で、「これは」という本を買い、手元に残してきた。
小説、ノンフィクション、漫画、画集、写真集、実用書、他。あ、オカルトの本とかもあるぞ。

本棚をざーっと眺めて目にとまった本を手に取ってパラパラとページをめくる。
昔好きだったもの、アニメとか特撮怪獣映画とか、の本を手にすると心安らぐ。というより他のことをほとんど忘れる。

今日、なんかモヤモヤした気分だったので本棚の前に立った。
手に取ったのは珍しくアニメや怪獣本ではなく、「アルベール・カーン コレクション」。
100年前に、フランス人アルベール・カーンによって世界中に派遣されたカメラマンがオートクロームという方式で撮影した写真集。
NHKで放送されたテレビ番組では動画も紹介されていたが、書籍はもちろん静止画のみ。それでも充分インパクトがある。もうほんと、モンゴルの囚人の首に繋がれた鎖のデカさとか、トルコで蒸気機関車が脱線して地面に突き刺さってる写真とか、ついなんだこりゃと見入ってしまう。
巻頭の「母に捧げる」という献辞も泣かせる。
紙をめくると心が落ち着く。

そうこうしてるうちに原因不明のモヤモヤも晴れ、無事いつもの私に戻ってめでたしめでたしなのでした(まぁ、どの状態が「いつもの」なのかよくわからないけど)。

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