なかなか死なないラスプーチン。映画『ニコライとアレクサンドラ』“Nicholas and Alexandra”を観たら

189分(3時間越え!)の長い映画なので、ぼちぼち分割して観ようかと思ったのですが、結局ほぼ通しで観ちゃいました。面白かったので。
*今回は結末まで書いちゃいます。ロマノフ王朝の末路を知りたくない人はご注意ください。

ニコライとアレクサンドラ (字幕版)

ロシアのロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世と皇后アレクサンドラ、そして家族たちの最後の日々(約13年間)を描いた歴史ドラマです。
1971年(日本公開は1972年)、フランクリン・J・シャフナー監督のイギリス・アメリカ映画です。『猿の惑星』の監督ですね。猿も英語喋ってましたが、この映画のロシア人も英語喋ってました。

物語は、アレクサンドラが、3,600gの男児を出産したところから始まります。女の子が四人続いた後に産まれたことで皇室としては喜ばしい限りだったのですが、ほどなく、この赤ちゃんにアザがあることがわかり、検査した医師団は、それが血友病の印であると断言します。
薬も治療法も無く、アレクセイと名付けられたその男の子はどれだけ生きられるかわからない、外傷による出血、打撲による内出血が止まらず、そのまま死に至る危険があると警告します。

その頃ロシアは日本と戦争中で、ニコライは皇帝としての職責のため、アレクセイのことは二の次になっていました。戦争継続を決心しているニコライに対して、撤退を主張する者も少なくないような状況でした。

一方アレクサンドラはアレクセイのことが第一で、まだ赤ん坊のアレクセイ出血が起こり、止まらなくなった時に、取り乱して、息子はもう死んでしまうのだと思いながら神に祈ります。
そんなアレクサンドラに接近したのが、自称聖母マリアに会った男、病人に触れるだけで治癒させる能力を持った男、ラスプーチンでした。
ラスプーチンはアレクセイの病気が発見される前から皇室と、アレクサンドラと接触していましたが、アレクセイの死に怯えるアレクサンドラに、祈りの力で息子を救えると接近していきます。
そしてアレクセイは命を取り留めます。こうしてアレクサンドラは完全にラスプーチンの信者になってしまいます。

その間も戦況は悪化し、おかげで疲弊した国内で暴動が起こるなど混乱を極め、革命の機運が盛り上がっていきます。このあたりでレーニンやトロツキーが登場します。

この後も国内外で事件や問題が続発し、ニコライは追い詰められていきます。国の外も内も解決できない問題が次から次に起こる様子は、体内体外問わず血が止まらなくなるアレクセイの病気みたいだな、と思いました。

やがて、軍の多くの将軍たちにも愛想を尽かされ、ニコライは退位します。
イギリスでの生活を望み、実現に疑いを持たなかったニコライですが、ニコライのいとこでもあるイギリス国王は入国を拒否します。フランスや、その他の同盟国もニコライの受け入れを拒否したため、一家はシベリアへ移送されます。

皇帝を退位してから周囲の扱いはどんどんぞんざいになり、居住先も貧しくなっていきます。
没落していく様子が手際よくいいテンポでわかりやすく描かれます。

皇帝時代は情け容赦なく兵士を戦場に送っていたニコライでしたが、没落して世界が狭くなると一人の兵士の怪我を心配するようになり、家族との時間に幸せを感じるようになります。
最後にほぼ監禁に近い境遇になると、「家族さえ一緒ならどこでも生きていけるさ」という心境に至ります。

50年近く前の映画で、歴史的事実に基づいていることなので結末まで書いちゃいますが、映画は歴史大河ドラマから始まって、終盤にかけては皇室家族の細ってゆく生活のドラマになります。
もともと基本的にはお互いを尊重する仲の良い家族だったのですが、追い詰められるに従って、その愛情は濃くなっていきます。
ロシア革命後の混乱も、第一次世界大戦の引き金を引いたと言われている、サラエヴォのフェルディナンド大公暗殺事件もドラマの背景のような扱いです。

ニコライは、「色々あったけど君を心から愛してるよ」みたいなことを言います。もうメロドラマ(「色々」あり過ぎ、なんですけどね。失敗多いしこの夫婦)。

私は、「メロドラマ」ってなんか惹かれることが少なく、「けっ」と思ってしまう方なのですが、この歴史大河からメロドラマに持っていく構成には引き込まれ、感情移入してしまいました。
そんな感情移入させといての最後の全員銃殺。
結構ショッキングでした。

戦争やら人が死ぬシーンとか多い映画ですが、過度な暴力描写はあまりなく、血もあまり映されない映画なのですが、それだけに銃殺後の壁に血が滴っているのにはゾッとしました。

映画の真ん中を過ぎたあたりでラスプーチンが暗殺されるシーンがあるのですが、さすがラスプーチン、毒を盛られても銃で撃たれてもなかなか死にません。これはさすがに映画の演出だろうと、鑑賞後に調べたら、ラスプーチンがなかなか死ななかったのは本当だったみたいです(っていうかそう伝えられている →Wikipedia「グレゴリー・ラスプーチン」)。

あと、結局は「皇室御一家物語」なので、歴史大河ものによくある「こいつ誰だっけ?」もほとんど無く、物語に集中できました。
ざっくりだけどロシア革命のお勉強もできるお得な映画だと思いました。長いけどさ。

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