初めの頃はなんだか複雑で置き去りにされそうになったNHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』ですが(そのあたりの心境 →散らしすぎだよ。大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺』)、金栗四三がストックホルムに出発するころにはすっかりハマりにハマり、人見絹枝の回では泥泣きし(そのあたり →もうこの一話だけで報われたじゃんね。ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』をずっと観てるら)、最終回まで全話視聴いたしました。いだてん完走いたしました。
じっくり腰を据えて観るべきドラマ。その価値があるドラマだったと思います。
初めの頃は馴染めなさもあったけれど、たくさんあるスタートレックシリーズでも、「このシリーズが本当に面白くなるのはシーズン3から」とか平気でレビューされてますからね。
で、確かにその辺りから各キャラクターが理解できてぐんぐん面白くなったりする。
シーズン3って50話以上過ぎてからですからね。全47話の『いだてん』なんかまだシーズン2が終わったくらいの物語量なわけですよ。
私が大河ドラマを全話観たのは『八重の桜』『黒田官兵衛』に次いで人生三作目。
前に見た二作は、ドラマとしての出来はともかく、通して観終わった後に「我慢と自己犠牲を経た者にのみ自由や自己表現が許される」という価値観が強く感じられていやでした。
「苦労した人には幸せになってほしい」が「苦労した人しか幸せになっちゃダメ」にたやすく変換されて、人々に刷り込まれているようでいやでした。
日曜の夜にこんなドラマ観て泣いて朝起きて会社行ってる人は、自分が幸せになるために行動することをためらってしまうんじゃないかと心配になっちゃいます。
『いだてん』で強く感じたのはそんな封建時代の呪いから放たれて、というかそもそもそんなもの物ともせずに自分の「面白い」に向かって行動することの大切さ、でした。そしてその障害になるのはそもそも何なのか?
走りたきゃ走る、泳ぎたきゃ泳ぐ。それができないのはなぜなのか?そんなことを考えながら観ていました。
従来の大河ドラマと趣きが違うため、やれ視聴率が、だの、複雑でわかりにくい(これは私も)、だの、たけしの滑舌が悪くてナレーションに向かない、だの、いろいろ言われていた『いだてん』ですが。
なにより、優れた物語は受け手の心の中でこそ像を結びます。
『いだてん』を完走した人は最終回を観て、なぜビートたけしだったのか思い知ったことと思います。私は思い知りました。
キョンキョンが全部持ってちゃうのかなぁと思ったら(それでも全然いいんだけど)、あの人この人みんなに見せ場があり、あきれるほどエピソード満載の、一年を締めくくるいい最終回でした。
でもやっぱり言っておきたい。
ビートたけしの志ん生は絶品。